クマザサから食料品のつもりが医薬品に

株式会社 サンクロン 代表取締役 調 了堂

◎兵隊さんの携行食品

 旧陸軍の糧秣廠に私の伯父、金子()時雨(じう(1903~1994年 九州大学農学部農芸化学科卒)は研究員として三度召集されています。研究は兵隊さんの携帯食の開発でした。最前線の兵隊さんの携帯食は、出来るだけ少量で軽くて最大限の効率・効果を求めることが命題になりますから、無駄な物は極力はぶくことになります。

 私達が日常食べる葉野菜は、葉が比較的軟らかいものを野菜として食べ、歯で細胞を噛み潰して中の内容物を消化して吸収しています。生野菜を70回噛んで細胞壁が壊れるのが約10%程だと言います。残りは便になりますから案外効率は悪いといえるでしょう。

 戦地の兵隊さんとなると、北はシベリヤから南は熱帯地方まで現地の食料事情がどうであれ、作戦にしたがって何処へでも出かけます。当時は馬で大砲や弾薬を運んでいましたので、先の糧秣廠では軍馬の飼料も大事な研究課題でした。

 カロリーを持つ三大栄養素とミネラルは比較的簡単に準備できたようです。ところが、時の上司であった栄養学者の川島四郎教官の希望は、「植物の成分そのものを携帯食にしたい」と言うものでした。現代のサプリメント摂取のような考えではなく、未知の成分を含む植物成分そのままを携帯食にするという考えです。

 そこで、伯父に与えられた研究課題は、植物の成分を損なうことなく細胞内の原形質を取り出し、その上で長期保存に耐える物を作ることでした。長い間研究したようですが、植物の硬い細胞壁を破壊して内容物を取り出す技術は見つからないまま、終戦を迎えました。

 

◎戦争が終わって

 いずれにしろ、国を挙げての大事な研究開発であったこと、また伯父は体は大きくても病弱だった自分の健康のためにも、諦めることなく研究を続けました。

 研究を続けると言っても、軍の研究室なら充分な設備もありましたが、自宅には何もありません。そこで、ビーカー、フラスコ、試験管代わりに、欠けた茶碗、ヒビが入ったコップなど、寄せ集めた物で研究したといいます。研究場所は自宅物置の地下室を利用していました。

 昭和25年(1950年)にようやく植物の細胞壁を薄くする処理をして破壊し、中の原形質を取り出すことに成功、この製法で特許を得ています。この取り出した原形質を加水分解した物は、鮮やかな緑で、高濃度クロロフィルを含んだ溶液でした。これを滅菌し、瓶詰めにしました。もちろん無駄な細胞壁は遠心分離器で取り除きましたから沈殿物はありません。


◎素材選び

 素材選びには苦労したようです。野菜を素材にすると、季節を考えたり、農薬や肥料を使っての栽培となり、手間も費用もかかります。色んな候補が上がる中、軍馬の観察から高山に自生しているクマザサに目をつけました。クマザサは牛や馬が好んで常食として食べるものですから、野草でも安全な素材であることは分かります。試験用に用いたササは、自宅横の哲学堂公園(東京都中野区)の門の脇にある矢竹の細長い葉を少々採って使ったと聞いています。現在も6株ほどが公園にありますが当時のままかもしれません。

 ササの細胞壁は硬いセルロースで出来ています。牛や馬はこのセルロースを分解する消化酵素を持っていますから、ササを主食にすることが出来ます。しかし、人はこの酵素を持っていませんので、ササや野菜を粉末にしたところで消化はできませし、ジュースが取れたとしても途中で酸化して成分が変質してしまい、長期保存が出来ません。


◎携帯食品から医薬品に

 クマザサから作った原形質溶液を糧秣廠での研究仲間に紹介したところ、この研究成果を川島先生はじめ皆が大層喜んでくれたといいます。糧秣廠には医師、薬剤師、栄養学者など諸々の専門家が集っていました。

 その服用効果は単に食品では勿体ないからと、この方々のお世話で昭和29年(1954年)に保険適用薬として医薬品になりました。この薬品名は最初クロロンと名付けられましたが、すぐに改め、「サンクロン」となりました。多くの病院・医院で投薬されました。この原形質溶液は非常に安定性があり、品質保証期間は3年になっています。現在は第三類の医薬品として市販されています。製造許可を得てから既に62年(2016年現在)になります。

 新鮮なクマザサの生葉を原料としていることで、緑鮮やかな高濃度のクロロフィルと各種ビタミン、必須アミノ酸を含んでいて、単に水溶液でないことは比重があることで分かります。医薬品としての効能・効果は、クロロフィルの持つ肉芽形成作用(傷口の補修)、抗菌作用、口臭・体臭の消臭作用で高い評価を受けています。

 先の川島先生はクロロフィルの含有量から換算して「このクマザサ原形質溶液の1mLは、ほうれん草にして200g分の価値がある」といわれたそうです。

 愛飲者は妊婦・乳幼児からお年寄りまで幅広く、治療薬としては当然ですが、普段の健康維持や緑の野菜不足の補いのために服用されています。

 

◎クマザサの採取と鮮度

 原料のクマザサ採取地は、上質で大きなクマザサが自生している信州戸隠、菅平、蓼科の国有地、県有地、民有地などから、許可を得て採取しています。クマザサは人の身の丈より背が高く身体が隠れてしまいますので、迷うことのないよう開けた作業道をつくり、道路脇で採取します。ササの採取は、枝先に6~7枚の葉が付いている、10~15センチほどの枝から採ります。葉だけを採ると5分もしないで乾燥して変色しますから使い物になりません。またビニール袋に詰めると、葉が持っている酵素で熱を持ち、蒸れて腐ります。枝を付けて採取したクマザサは適当に風通しがある麻袋に詰めて搬出します。

 野生の馬やアメリカのバッファロー、パンダの食事は、人の食生活から言うと大変な偏食ですが、イネ科のササ、ススキ、牧草だけを食べてあの大きな骨格と筋肉を作り上げているので、ササが持っている栄養素は大変な物であることが分かります。パンダは本能で分かるのでしょう、枝付で与えないと、葉だけを与えても決して食べません。また、ゾウも木の葉を枝ごと食べて、今落葉になった物でも食べないそうです。私たちも野菜を買うのに地産地消といって四里四方のものを買うようになってきていますが、保存料・着色料・防腐剤を使った加工食品、加工調味料が多く口にされている中で、本当に良いものを選ぶ能力が鈍感になっているのかもしれません。

 製造はクマザサ生葉を新鮮な状態を保ったまま集荷できる利便性と、良質な依田川の伏流水が豊富に利用可能な長野県上田市の工場で行っています。


◎クマザサ原形質液「サンクロン」の役割

 最近は開発の発想であった食料品「サンクロン」の現在における存在意義を強く考えるようになりました。

 ここ数十年の日本人の食生活を顧みますと、青菜のお浸し、煮浸しは過去の料理になってしまい、青野菜の消費が格段に少なくなっています。当然、生産も減っています。人に必要な野菜の第一は青菜であって、白菜、大根はその後です。若いご家庭の食卓には、有っても生野菜のサラダで、これは火を通せばわずか一握りの量となり、食べた内には入りません。今の風潮の中で、レタス、キュウリ、トマトだけしか買いませんと言う人もいます。これでは植物成分が基本的に足りません。

 クマザサ原形質溶液は、本来は兵隊さんの非常食であり、健康管理、体力・持久力強化のために発案されたものです。今の平和な生活の中で、非常食というには違和感を覚えますが、しかし、大きな問題となっている生活習慣病の増加を非常時と考えるなら、サンクロンは現代日本人を救う非常食だといえます。

 どうぞ「サンクロン」を服用して、日本人本来の身体創りをして頂きたいという思いです。